なつかしい木戸川渓谷の萌え始め
 楢葉町木戸川渓谷 平成17年4月
 

楢葉町の大谷から木戸川沿いの道を車でゆっくり走らせ、木戸川第三発電所の側を通り、橋を渡って木戸ダムに向かう道に入り、女平からトンネルを抜けると美しい渓谷が見えてくる。この自然豊かな木戸川渓谷は、新緑の季節から紅葉の季節にかけて多くの人々を魅了してきたし、僕も毎年木戸川渓谷の散策を楽しみにしてきた。ここの渓谷美は阿武隈山地を刻んで太平洋に流れ下る河川が並ぶ浜通りの渓谷のなかでもとりわけ素晴らしいと自負していたし、新緑や紅葉の季節にここを訪れていた多くの人々もそう思っていたことだろう。

しかし昨年の3.11以降、状況は一変してしまった。原発事故による警戒区域に指定されたため、誰もこの美しい渓谷に足を運ぶことが出来なくなったし、何よりも渓谷周辺の自然林が放射能汚染されてしまった。

豊かな水を貯えた木戸ダムも、周囲の山林から流れ込んだ放射能汚染土により、湖底の泥にはセシウム134やセシウム137が高い線量で含まれているものと考えられる。とにかく美しい郷土の山河が放射能汚染されてしまった。これ以上に残念なことはないだろうと思う。

山菜を採ることも、キノコを採ることも、木戸川でアユやヤマメ、イワナを釣ることも出来なくなってしまった。昔から営々と継がれて来た自然の恵みが断たれてしまった。人々と木戸川や井出川沿いの豊かな自然との共存が断たれてしまったのである。

元の浄い自然に戻るには、今後最低30年間はかかるであろうし、場合によってはもっとかかるかもしれない。とにかく、美しい木戸川渓谷は記憶の中の存在になってしまった。

今回は、今まで撮りためた木戸川渓谷の写真の中で、一番好きな新緑の風景をリリースしたいと思う。平成17年の4月に撮影した。今から7年前の新緑風景である。

二度と悲惨な原発事故が起きない世の中にする事を誓って。

 
 
新緑の渓谷風景は、淡い彩りで、その日本画的な風情が魅力だ。
 
木戸川渓谷は典型的なモミ−イヌブナ林帯。この年はイヌブナが満開であった。何年に一度というイヌブナの豊作の年。
 
木戸川渓谷では、四季を通してこの眺めがお気に入りだ。若芽は、ブナやアカシデから萌え始める。
 
まぶしく輝くようなイヌブナの萌葉。
 
様々な木々が淡い色彩で萌え始めている。この風情がたまらなく日本的だ。
 
淡い新緑に濃いモミの木立が映える。
 
葉は渓谷の岸辺から萌え始め、次第に斜面を登ってゆく。淡いコナラの萌葉も水彩画的だ。
 
あまりに急な斜面で、誰も歩けないような尾根の稜線。自然林のままだ。
 
尾根には、モミだけではなく、ヒメコマツの木立も見える。
 
このように素晴らしく輝くイヌブナの樹冠を随所に見ることができた。
 
左岸の深い谷と合流するあたり。急な渓の斜面に挟まれている。人跡も無い自然の渓。
 
ここの渓が萌え始める頃は、一際美しい。老齢で立ち枯れたモミやヒメコマツの木立もそのままに残されている。
 
イヌシデ、アカシデ、クマシデの萌葉の彩りが印象的。
 
このとき初めて撮影したイヌブナの雌花。
 
太いモミの高木。
 
イヌブナの雄花も初めて間近に見ることができた。
 
モミの古木も美しい。
 
日当たりの良い斜面では、コナラも芽吹き始めた。
 
 
満開のイヌブナの雄花。
 
木戸川渓谷には、ときおり強い渓風がふく。風に揺れるアカシデの花。
 
イヌブナの若葉と雄花。
 
豊饒の渓をイメージできた。 

阿武隈山地の分水嶺、川内村は大滝根山の麓を水源とする木戸川、川内村から楢葉町にかけての山中を深く刻んで渓谷をなしているが、それは豊饒の渓でもあった。そして渓はさまざまな生命の源として神々に守られてきた。渓の奥深くは神聖にして侵すべからざる秘淵であり続けてきた。

しかし、人間は神の領域にまで踏み込んで、禁断の火に手を出し、それがゆえに絶望的な災禍をもたらせた。放射能の災禍は渓の聖なる秘淵までに及び、神々も力尽きた。

聖なる秘淵を囲む山々は豊かな自然の親神である伊邪那美にも例えられ、禁断を犯した火の災禍で伊邪那美は黄泉の国にお隠れになられてしまった。

禁断の火は神殺しの邪剣であり、それを手放さないかぎりにおいて贖罪をなすことはかなわぬであろう。

 
 木戸川渓谷が掲載されているサイト集
木戸川の新緑風景

木戸川渓谷遊歩道

福島県双葉郡といわき市北エリアの林道

木戸川渓谷のムギラン

木戸川渓谷

木戸川渓谷・郭公山

浜通りの滝/木戸川渓谷(きどがわ)

木戸川渓谷遊歩道(福島県楢葉町)

木戸川渓谷の滝たち 楢葉町

木戸川渓谷

福島・木戸川渓谷の滝群